木材には正式名称よりも俗称で呼ばれているものがあります。
殆どは元の材の名前があまり馴染みがない場合に、より円滑に流通販売するための手段として俗称がつけられてきたのですが、結果的にお客さんが混乱する場合もあり、ここ数年それが顕著な材があるので忠告を込めてご紹介。
リグナムバイタ=緑檀=パロサント
世界一硬く重い木ということで、木が好きな方は一度は聞いたり調べたことがある『リグナムバイタ』ですが、用途は船のスクリューの軸受やギアと行った強度の必要な部品に使われていましたが、日本では数珠玉として使われることが多く、紫檀や黒檀と同じように和名の俗称として『緑檀』と名付けられていました。
ところが、近年緑檀と呼ばれる呼称でリグナムバイタではない材が流通するようになってきました。そのもう一つの木の正式名称がパロサントという材です。
リグナムバイタ:中南米原産・ハマビシ科。濃緑褐色で多量の樹脂分を含む世界一硬く重い木。触ると蝋のようにべっとりしている。ラテン語で「生命の木」を意味している。
パロサント:南米原産・ハマビシ科。緑褐色で樹脂分を含み非常に硬く重い木。甘い香りが特徴。
スペイン語で「聖者の木」や「神の木」と言う意味がある。海外ではアルゼンチンリグナムバイタと呼ばれることもある。
なぜ二種類存在するのか?
『緑檀=リグナムバイタ』だったのですが、元々が特殊な材のため一部でしか流通しておらず、現在では絶滅の危機にある為、名前と特徴だけで実物を見たことがない人が多い。
リグナムバイタは「世界一硬くて重い緑色の木材」というインパクトのある特性が似ているパロサントと混同してしまった。
『パロサント』という樹種が世界に二種類あり、混同を避けるために片方を緑檀としてしまった。
おそらく上記の要因から『パロサント=緑檀=リグナムバイタ』という間違った図式が出来上がり、パロサントが木材の市場で緑檀として出され、リグナムバイタとして流通してしまい、緑檀(リグナムバイタ)として売られている…なんていうことが起きてしまった。
左からリグナムバイタ、パロサント
*パロサントはしまい込んでいたのであまり緑色になっていません、あしからず。
パロサントは紫外線で緑色が濃くなった状態でも色味が異なりますし、触った感触や匂いが全く異なり、明らかに別物とわかります。
この二種、業者間でも間違えていることがあるため、加工品を販売している店舗でも間違えて表記されていたり、間違った説明をしている場合がありますので、購入検討するときは、注意しましょう。
*リグナムバイタは材の特性上、ペンにすると割れやすく使用環境に関わらず割れてしまう可能性が高いです。また、樹脂分で手がべとつきます。
香木のパロサント
ついでなので香木のパロサントについても。
こちらは全く同名の別種なので少し調べればすぐに分かりますが、どちらも精油が取れるくらい甘く良い香りがするという共通点があります。
香りの強さは圧倒的に『香木のパロサント』が上で、当店では匂い移りしないよう密封保管していますがそれでも匂います。
ペンの状態ですが、二種類のパロサント
材の硬さも色も全く異なるので比較は簡単ですが、精油だけの知識や良い香りがするパロサントというキーワードだけだと、間違ってしまう可能性があるので要注意です。
また、最近知ったんですが、緑檀パロサントをグリーンサンダルウッドと明記していることがあるようです。
いい匂いのする木を〇〇白檀とか〇〇サンダルウッドと呼ぶことはよくあることなので、それほど気にすることはないのですが、サンダルウッドとは白檀のことで、緑檀パロサントとは全く別種なのでご注意下さい。
とは言え、ただでさえややこしい緑檀やパロサント関連、これ以上変な俗称増やさないでほしいところです。
左からリグナムバイタ、パロサント、香木パロサント
なおリグナムバイタは材の特性上ペンにすると割れてしまいますが、パロサント、香木パロサントは問題なさそうです。
*香木パロサントはサンプル程度に仕入れただけなので特注制作不可。
*今回紹介した香木パロサントは東京ペンショーにて販売予定です。
コメント
初めてコメントさせていただきます。
二胡という楽器に使われている木材を調べていて
こちらの記事に行き着きました。
緑壇についての記事、大変勉強になりました。
この記事の内容について私のブログの中で
抜粋で紹介させていただきたいのですが、お願いできませんでしょうか。
ご検討いただきご回答いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
二胡に緑檀が使われているのですか…強度のある材なので使えるとは思いますが面白い発見です。
抜粋してお使いいただいて構いません。
ではよろしくお願いいたします。